2006.11.22
提供:北海道住宅通信社
 道産材を使った「地材地消」の家づくりに取り組む工務店が増えています。
 道が04年度から実施した道産材利用促進対策もひとつの契機となって、道内各地で木材業者、設計事務所、工務店が連携して軸組に用いた道産材を見せる構造見学会も数多く開催されていますが、「地材地消」の意義やメリットは未だ本道の住宅業界に十分浸透してはいません。
 リレーインタビュー形式で「顔の見える家づくり」を再考してみました。


第3回 道北振興(旭川市) 佐々木 通 さん

   カラマツ集成材を全棟に採用
     −竣工後の狂いや歪みを減らし「クレーム対策」のひとつに−

 道北・道央圏の大手地場ビルダー、道北振興(本社・旭川市)は4年前から構造材に道産のカラマツ集成材を採用しています。きっかけはクレーム対策。狂いの少ない構造材を探した結果、たどり着いたのがカラマツ集成材でした。建築工事費の坪単価が1万円強アップし、採用当初は原価管理や営業対応に苦労したという話ですが、今では「逆に売りやすくなった」といいます。佐々木通建設部長に道産のカラマツ集成材を使った家づくりの取り組みを聞いてみました。

写真:佐々木 通さん――当社は提案型規格住宅の標準工法として、外張断熱の新在来工法「エコ・ラーチ工法」を採用しています。その特徴のひとつが道産のカラマツ集成材を使った構造躯体です。4年前から主要な構造材や羽柄材にカラマツ集成材を採用しています。昨年、全棟使用を達成しました。

 きっかけはクレーム対策でした。強度に優れ、十分に乾燥した木材を使えば、建築後の狂いや歪みは少なくなります。材料強度、乾燥や接着の精度などを考慮して最終的に選んだのは、北海道の気候風土のなかで育った道産カラマツの集成材でした。

 樹種別にみたカラマツの強度はアピトンやベイマツなどに次いで3番目に強く、ヒノキと同等です。集成材に多用されているエゾ・トドに比べ2ランクも高い。無垢材はねじれや割れ、ヤニなどの欠点はありますが、均質化されたひき板(ラミナ)に加工・乾燥して接着することで、強度的なバラつきの少ない安定した品質を発揮します。

――道産カラマツ集成材を柱・梁の主要構造材だけでなく大引、根太、間柱にも用いています。4年前の導入当初は年間施工棟数の約3割に採用しました。道産カラマツ集成材の材料価格は1u当たり9万円強。坪単価で1万円強のコストアップになるだけに、最初の年は営業・施工の両面で苦労しました。材料自体が重くて硬いため、現場からは「高圧の釘打ち機でないと釘が打てない」との声も聞かれました。今では大工職人の慣れもあって施工はスムーズに行われています。建て方時の狂いが少なく、間柱の調整も不要。施工手間の軽減にもつながっています。

 最初は半信半疑だった営業部門も今は「売りやすくなった」と言っています。カラマツ集成材を大引や根太に用いることで、床の不陸や幅木浮きがなくなり、間柱に使うことで壁の凹凸やクロスの皺が発生しなくなりました。

――住宅産業にクレームは付き物。クレーム対策に要する経費を事前に投じるか、クレーム発生後に支払うか。住宅を供給する側の責任をいかに自覚するかの問題だと思います。無垢材に比べ不具合の発生が大幅に減少する構造躯体の品質に自信を持ってアピールすれば、コストアップに対する建て主の理解は十分得られると思います。

――戸建住宅の需要客は木材の産地にあまりこだわりません。あくまでも住宅価額との折り合いが第一。道産材だから使えば良いというものではありません。材料強度面のメリットや地場産材としての付加価値を生かす上で、コスト高を吸収できる生産体制になっているかどうかが重要なポイントのひとつでしょう。

 当社が使っている道産カラマツ集成材は、佐藤木材工業(本社・紋別市)の製品。レゾルシノール樹脂の接着材の配合も当社向けに改良してもらいました。接着部などの材料性能面で20年保証を付けています。製造段階から関わったことで、良質な部材の安定供給が可能になってと思います。

――カラマツ集成材は自社のプレカット工場で一貫加工しています。CADオペレーターが作成した設計図は、熟練大工が基礎伏図にまで全て眼を通し、実際に建て方を行う状態でチェックしています。写真:room現場施工に即した生産体制で、無駄や手戻りの発生を防いでいます。

 こうした生産体制を整えれば、道産カラマツ集成材は間違いなく、同業他社との差別化につながると思います。最終的な目標はクレームの発生ゼロですが、建て主が竣工後の不具合から受けるストレスを出来るだけ少なくすることもアフターサービスのひとつ。その効果は営業面だけでなく経営管理面のメリットにもつながると思います。


 エコ・ラーチ工法 スカート断熱併用の基礎断熱、ネオマフォームの外張断熱を採用した次世代省エネ基準適合の新在来工法。1階床は蓄熱性を持つ土間コンクリートに鋼製束を用いた大引構造。柱・梁の主要構造材だけでなく大引や根太、間柱にまで道産カラマツ集成材を使用。内装には天然無機系の調湿建材「モイス」を採用。提案型規格住宅のコンセプトに合わせ、カラマツ無垢材の見せ梁も。換気は維持管理上の信頼性が高い第3種換気システム。


(写真説明)
企画住宅のコンセプトに合わせて「見せ梁」や無垢のカラマツを内装材に用いる場合も

 佐々木 通(ささき・とおる)さん  1962年10月30日、留萌管内幌延町生まれ。専門学校卒業後、道北振興に入社。プレカットセンターを統括する建設部のトップとして、提案型規格住宅の「イズム」「イング」や新在来工法「エコ・ラーチ工法」を開発してきた。

道北振興
〒070-0035 旭川市5条通6丁目右1号
電話 0166-23-0211 / FAX 0166-22-8036


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