2005.10.01
一級建築士事務所 くりえいと創 様

くりえいと創の眞壁さん


釧路を中心に全道的に活躍されている建築士、「くりえいと創」の眞壁さんを訪ねました。


小中学生からのあこがれ

 「建築設計士になるのが小中学生のころからの夢だった」と語る眞壁さんの仕事は楽しそうだ。ホームページを見れば温かみを感じるし、事務所を訪ねると外観もユニークだし、内壁には住宅の模型がかかっており、一つ一つの表情が違う。見ているだけでも楽しい。
くりえいと創_外観
一級建築士事務所「くりえいと創」の外観

山は「やばい」と知ってから

 その眞壁さんも「北海道木質構造開発協議会」のメンバーだ。
 「木材」に対する感覚は、以前は輸入材・道産材の区分なく、木材を使っていたが、北海道木質構造開発協議会に参加し、製材工場との付き合いが増えてから、以前の感覚とかなり違ってきたという。
 以前は、「コストが予算内に収まればよい」という程度であったが、製材工場を通して山の状態を知って「やばい」と知ってからは、積極的にオーナーにも道産材の利用を提案するようになったという。
 また、今は国産材の自給率は20%弱(道産材は40%程度)であるが、国産材(道産材)が外材に駆逐されてしまったらどうなるのか。例えば世界情勢が変化して輸入材が入ってこなくなったとしたら、木材産業界が崩壊してしまったら国内(道内)資源を供給できなくなり、住宅産業界にも跳ね返ってくる―――という危機感もあるという。

デザイン上の工夫

 木材の原料コスト高を眞壁さんはデザインや設計の工夫でカバーする。ポイントは住宅の「体積」を小さくすることと、シンプルな設計にすることだそうだ。たとえば天井の高さを低めに抑えることで、壁面積が小さくなり、原料使用量や加工賃が低く抑えられる。また、柱も一つ一つ意味を確認して、要らないものをはずす。
 しかも、これらの作業は、決して住宅を貧相なものとしないで行われる。綿密な打ち合わせと、細かい確認作業、高い技術力がなせる業だ。
 眞壁さんの建築では、設計監理に1年以上の年月をかけることも少なくないという。

公園通りのKAKUREGA

 先月(平成17年8月)、眞壁さんの設計する住宅が釧路市内で完成した。「公園通りのKAKUREGA」だ。広い開放感のある居間と、シンプルなコート(中庭)。居間にはグランドピアノが置かれ、コートを通してとおりの向かいの公園の景色を楽しむことができる。その景色はお風呂からも楽しむことができるが、プライバシーは確保している。非常に贅沢な住宅だ。

地元のカラマツ材を使って

 「公園通りのKAKUREGA」は、地元のカラマツ材を地元の木材業者が加工し、眞壁さんが設計し、地元の工務店が施工したもの。特にカラマツは、柱や梁に用いたが、その一部は「無垢心去り乾燥」材である。
 カラマツは「旋回木理」といって、若いころは繊維がねじれながら成長する。そのため、若い材はねじれやすい。木材は外に太っていくので、丸太の中心部(心)はねじれやすい。このねじれやすい部分を取り除けば、ねじれにくく、割れづらい木材が取れる。乾燥もしっかりすれば、更に良い。
 近年、木が太くなってきて、「無垢心去り乾燥」材が取れるようになってきた。
 眞壁さんも「無垢心去り乾燥」材を使うのは初めて。ある新聞社の取材に「カラマツなど道産材に対する認識を新たにした。構造材としても、十分に使えるものだとわかった」と話している。

 地域の産業が地域でやっていくには、関連する産業と手を組み、「1+1」が「2」以上に、「3」にも「4」にもなる取組が必要だ。地元の木材業者と手を組み、楽しい建築物を次々と創る眞壁さんの活動に、今後も期待したい。

公園通りのKAKUREGA記事(北海道建設新聞より)

参考

〔くりえいと創 様〕

〔北海道木質構造開発協議会(先月の特集「長谷川建築設計事務所」を参照)〕

地元の木材業者

〔丸善木材(株)〕
〔丸善木材(株)(ウッドプラザ北海道内)〕
〔厚浜木材加工協同組合〕
〔厚浜木材加工協同組合〕(ウッドプラザ北海道内)
〔厚岸木材工業協同組合〕(ウッドプラザ北海道内)
〔カラマツはどんな木?〕



そのほかの「道産材へのこだわり」はこちらから

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