2005.11.07
提供:北海道住宅通信社
 道産材を使った「地材地消」の家づくりに取り組む工務店が増えています。
 道が04年度から実施した道産材利用促進対策もひとつの契機となって、道内各地で木材業者、設計事務所、工務店が連携して軸組に用いた道産材を見せる構造見学会も数多く開催されていますが、「地材地消」の意義やメリットは未だ本道の住宅業界に十分浸透してはいません。
 リレーインタビュー形式で「顔の見える家づくり」を再考してみました。


第2回 設計工房アーバンハウス(帯広市) 小野寺 一彦 さん

 地域で賄え!住宅の「技術」と「材料」
   −地道に根差した家づくりが「地材地消」の循環ネットワークを生み出す−

写真:小野寺 一彦さん――事務所を開設した約20年前から当社の設計図面に「ラワン」の文字はありません。当時から森林資源の荒廃による環境への悪影響が問題視されていましたが、何よりも「地域に根差した家づくり」を設計ポリシーにしたいを考えてきたからです。ビニルクロスも使いません。将来的には住宅建築に必要な技術や材料がその地域内で完結できるようになればと願っています。

 最近になって、ようやく「地材地消」が現実味を帯びてきました。スローフードや環境税に象徴されるように、木材生産者を取り巻く状況が大きく変化してきています。十勝のカラマツ造林木も大径化が進んでおり、今後大量に出材される伐採木の利用拡大は、住宅をつくる側にも様々な影響を及ぼすでしょう。

 ただ、出材する山林によって質のバラつきが大きく、住宅用材として一般に流通するまでにはまだ時間が掛かりそうです。癖の強い材質だけに乾燥やヤニの処理に手間が掛かり、歩留まりの確保も難しいでしょうが、製材業界には素材生産型の高コスト体質が染み付いている側面があり、住宅用材としての消費構造に見合った産業構造に十分なっていないところにも問題の一端があるかと思います。

――物流経路がはっきりしないのも難点のひとつです。どこで買えるのか、1本売りはするのか。ホームセンターと提携した商流のネットワークがあってもいいでしょう。製材業者からよく「どんな製品をつくったらいいのか」と聞かれますが、一般に住宅用材として使われる既成寸法の製品があればいいと思います。胴縁やヌキなどの副材を品揃えすることも重要です。材質を考慮せずに、ただ単に長尺品をつくっても、建て主のクレームにつながるだけです。木材を無駄にしない製材寸法のあり方について、住宅業界側と議論することも必要でしょう。

――建築する側から見れば「地材地消」のメリットは現在のところ、あまり多くはありません。せいぜい木材の産地が分かることくらいでしょうか。カラマツの製材価格(乾燥プレーナー掛け)は工務店入りで1u当たり約6万5000円。エゾ・トドに比べ1万円ほど割高です。カラマツが割安な製材であるならば、どこの工務店でも使っています。

――ただ、そうした現実を補って余りある価値や意義が「地材地消」にはあると思います。一挙に高まった人気は一挙にダメになるものです。ブランド化すると生活から離れ、嗜好品に堕するおそれもあります。地域に根差した写真:小野寺 一彦さん家づくりとして地道に使い続けていくことが「地材地消」の循環ネットワークを生み出す最も有効な手段だと思います。

――道が推進する新しい北方型住宅とリンクして、道産材の利用拡大を図る方策も考えられるのではないかと思います。行政サイドは、税制面も含め地域住民が享受できる「地材地消」のメリットを真剣に考えてほしいですね。少しのインセンティブ(誘因)で「地材地消」の需要が動くところまで来ていると思うからです。

(写真説明)
帯広市内に完成した「公園東町の家」。十勝産のカラマツ材をふんだんに使っている。

 小野寺 一彦(おのでら・かずひこ)さん  1957年十勝管内大樹町生まれ。八戸工大工学部卒業。帯広市内のフジ建築計画設計を経て、1983年に設計工房アーバンハウス開設。建築士事務所全国大会の作品表彰や帯広市都市景観賞など受賞歴は多数。「十勝の山と建築を考える会」の代表も務める。

 設計工房アーバンハウス (新しい画面で開きます)
  〒080-0016 帯広市西6条南2丁目12−6
  電話 0155-23-7011 / FAX 0155-23-7035


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