2006.12.13
提供:北海道住宅通信社
 道産材を使った「地材地消」の家づくりに取り組む工務店が増えています。
 道が04年度から実施した道産材利用促進対策もひとつの契機となって、道内各地で木材業者、設計事務所、工務店が連携して軸組に用いた道産材を見せる構造見学会も数多く開催されていますが、「地材地消」の意義やメリットは未だ本道の住宅業界に十分浸透してはいません。
 リレーインタビュー形式で「顔の見える家づくり」を再考してみました。


第4回  辻野建設工業(当別町) 辻野 浩 さん

   建て主自身の愛着とこだわりが大事
 −長閑な田園と里山に囲まれた北海道の風景に合った暮らしの場を提供−

 8年前から独自に田園住宅プロジェクトに取り組んできた辻野建設工業(本社・当別町)。辻野浩社長は道産材に限らず住宅部資材全般に対する「地材地消」のこだわりが強い半面、「建て主に押し付けない」自然体の家づくりが持ち味。当別町から月形町に向かう国道275号線沿いに建つ個性豊かな住宅群は「自社の広告塔にもなっている」とも言います。

写真:辻野 浩さん――「当別田園住宅プロジェクト」は98年から取り組み始めました。広い敷地と安い地価が最大の魅力。これまで建築された住宅の平均敷地面積は600坪で、敷地の坪単価は5,000円。長閑な田園と里山に囲まれた、北海道らしい風景に合った暮らしの場を提供するのが狙いです。

 当別町は04年に「優良田園住宅建設促進法」に基づく基本方針を策定し、農地転用の規制緩和によって同プロジェクトを後押しています。居住者の9割は道外や町外からの移住者です。インターネットや住宅雑誌を見て興味を抱いた建て主が多いですね。

 建築家と一緒に建築した個性豊かな住宅が多く、国道を車で走行中にそれらの建物を見て来社するお客様もいます。ちょうどスウェーデンヒルズの初期段階と同じように、国道沿いに点在する住宅群が当社の広告塔ともなっています。

――昨年から道産材利用促進の連携グループ「Do木の暮らし・道央ネットワーク」に参画し、軸組材の補助対象となる「道産材の家」を3棟建てました。使用した樹種はトドマツが中心です。無垢材と集成材を併用し、このうち2棟がプレカット加工しています。

 輸入製材に比べ、性能や価格面で遜色がなくなってきたことが、道産材の活用を後押ししていると思います。国際的に木材の需給環境は徐々に逼迫しており、将来的な価格の高騰を考えれば、道産材の供給ルートを確立しておくことが重要になってくるでしょう。

 当社はスウェーデンハウスの施工協力会社として、以前から道産のスタッド材を使っていたこともあって、施工面の不安や心配も全くありませんでした。

――ただ、施工する側の「地材地消」へのこだわりを無理して建て主に押し付けてはならないと思います。土地購入の段階から建て主との間にしっかりとした人間関係を築くことが第一。協働してコーポラティブな家づくりを進めていく過程で、建て主に道産材に対する愛着を少しでもインプット出来ればいいと思っています。

 実際に、建て主と一緒に道産人工林材の伐採現場を訪れることもあります。最近、家づくりの価値観が多様化しつつありますが、「健康」にせよ、「環境」にせよ、まず建て主自身に愛着とこだわりを持ってもらうことが大事です。

 住宅を設計・施工する側としては、構造躯体の基本的な性能と素材の確かさにはこだわっています。最近の例では、外壁材に薪炭煮沸の羽目板、断熱材はサーモウールを使いました。製品の銘柄ではなく、素材の味わいや性能にこだわりたいと思っています。

 現場見学会は年間10回以上開催しています。分譲用の宅地を常時仕入れられない地場の工務店にとって、顧客予備軍のお客様と接する現場見学会は貴重な集客手法のひとつ。毎秋、近隣の農地を借りて収穫祭や物産市を開いており、端材を提供するガレージフェアの人気も高いですよ。

――注文住宅の受注棟数を伸ばすには土地の手当てが不可欠。特に、札幌市の郊外に分譲用の宅地を入手出来れば、集客の拠点ともなります。地主とタイアップする事業手法も今後、検討すべきでしょう。将来的な戸建住宅の需要減退を考えれば、厳しい競合・淘汰の時期を迎える前に、事業の基盤を固めなければならないと思っています。今後、札幌への足掛かりを築くために、同業他社との合併や連携も視野に入れていくべきかとも考えています。

 今、暖めているアイデアの一つは「エコロジーキャビン」。生活に必要な居住用途を備えたキャンピングカーの住宅版です。洗練されたデザインのキャビン(小屋)を北海道ならではの長閑な風景の中に置いてみたい―、そんな生活発想が次の時代の需要を生み出すと思っています。


写真:田園住宅@  写真:田園住宅A

(写真説明)
国道275号線沿いに建つ個性豊かな田園住宅


 辻野 浩(つじの・ひろし)さん  1961年(昭和36年)10月29日生まれ、当別町出身。北大工学部卒。辻野建設工業、当別熱源、辻野焦点などグループ4社を束ねる。道建築士会などの公職も歴任してきた。

辻野建設工業
〒061-0224 石狩郡当別町末広380番地
電話 0133-23-2408 / FAX 0133-23-3591


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