地震に強い建物とは、工法や構造で決まるものではなく、設計と施行で決まります。設計と施行は車の両輪のようなもので、どちらか一方が悪くても「良い住宅」とは言えません。
もしもの災害から家族を守るためにも、安全な住宅を設計・施行するポイントを知ることが大切です。
「地盤」―良い地盤を選びましょう
弱い地盤の上にいくら強い家を建てても、地震の大きな揺れには勝てません。
本来、宅地向けではなかった河川敷や軟弱地盤地域、泥炭地などを埋め立てたり、丘陵地を切り開いて宅地用に造成したよな土地は地盤が弱く、特に盛土(くぼんだ地盤に土を盛ってならした土地)は地震に弱い性質ががあります。
弱い地盤には、セメントを混ぜて強い地盤に変えたり、地中深くにある良好な地盤に届く杭や基礎を使うなどの補強策を行う必要があります。
「基礎」―しっかりと基礎固めをしましょう
しっかりした基礎には地震の被害を最小限に抑えます。逆に基礎が弱いと、地震がなくても床が傾く、壁がひび割れるなど、建物全体に悪い影響がでてきます。
在来工法の基礎は、布基礎(敷地の上に田の字や目の字、格子状などの形に設ける基礎)となっています。布基礎は建物の重さを均等に分布して地盤に伝えます。基礎を掘るときには、事前に地面から水がしみでてこないかしっかり確認しておく必要があります。
そのような土地に建てる家は、基礎がすぐ腐朽してしまいます。
二階建ての建物や、軟弱地盤上に建てたりする場合には、基礎は特にしっかりとした造りにしなくてはならず、コンクリートづくりで内部に鉄筋を入れるべきでしょう。
「軸組」―がっちり結びついた骨組みに
軸組は土台、柱、筋かいなど建物の骨格と言える部分です。
土台
基礎の上にのる木材で、基礎と軸組をつなぐ重要な位置にあります。丈夫で腐らない木材を使用します。土台が腐ると、その上にのっている柱などの軸組が全て傾いてしまいます。
また、土台のコーナーには火うちをつけて、補強することが必要です。
アンカーボルト
建物が地震の揺れでずれないよう、基礎とその上にのる土台とをしっかり緊結させる先の曲がった鉄の棒のことです。
中心よりも外側に寄った位置からまっすぐに入るのが正しい設計です。
アンカーボルトは一間間隔(182cm)以下で打つことが必要です。
通し柱
一階から二階までを一本の柱で貫いたものです。通し柱は名前の通りに住宅を一本の柱で通し、一階と二階をつなぐという重要な役割を果たします。
この通し柱によって、地震の横の力で一階と二階が別々にずれてしまう、という被害を防ぐことができます。
柱と土台や桁などの間に斜めに渡す木材のことです。図のように柱と桁だけの建物では、地震のような横方向の力が加わると簡単に変形してしまいます。
そのために上から押しても、横から押しても変形しにくい三角形の強さを住まいの壁や床、天井などに応用して補強するのです。
筋かいを建物のあちこちに均等に入れることによって耐震性は大きくアップします。
筋かいを入れる場所がかたよると、全体のバランスが崩れ、地震の際に逆効果となる場合もあります。また、斜めに渡したその角度が45度に近くなるようにすることがポイントです。
「耐力壁」―地震に耐える強い壁に
筋かいやボード類(構造用合板)で補強した壁のことを「耐力壁」といいます。耐力壁は地震の力を建物全体に分散するので、耐力壁が多い(耐力壁の面積が広い)住まいほど地震に強くなります。
量を多くするだけではなく、建物全体にバランス良く配置しなくてはなりません。
特に、一階の耐力壁はできるだけ多くするようにしましょう。一階が駐車場や店舗になっていて柱や壁が少ないと、地震の力がその弱い部分に集中して、潰れてしまうからです。
「床組」―床は揺れの力で変形させない
軸組が垂直方向の骨組を指すのに対して、床組は水平方向の骨組を指します。日常その上で人間が歩きまわる部分です。
しっかりとしたつくりが必要です。
地震の力は床組の四角形を変形させるので、それを防ぐために筋かいと同じ原理に基づいて、コーナーに「火打ち」という木材で三角形つくって補強します。
吹き抜けはせっかく強くした建物の床を削ってしまうことになるので、周囲をしっかり耐力壁で固めなくてはなりません。
できるだけ開口部を少なくするため、吹き抜けの一面のみが外に面するような設計が望ましいのです。
「屋根」―屋根は軽く、単純な形に
建物が重くなるほど地震が建物による与える力は大きくなり、耐震性も低くなります。ですから屋根はできるだけ軽いものにすることが望ましいのです。
北海道では、冬期期間の積雪問題がありますので屋根の形が構造により耐震性に差がでる場合があります。
建物の耐震設計のポイント
住宅の構造部分別に設計、施工のポイントを見てきました。住まいの安全設計のためのポイントは次の通りです。
1.良い地盤を選ぶこと
2.基礎は鉄筋コンクリートにして土台と緊結させること
3.筋かいや耐震壁の量を多くし、バランス良く配置すること
4.軸組は頑丈な材料を選び、つなぎ目をしっかり金具で固定すること
5.屋根はできるだけ単純な形にすること