S邸
今回は、道産カラマツ材を使ってリフォームをしたS邸を訪問しました。
「不安」よりも「楽しみ」
施主は、中古の住宅を買ったとたんに仕事の都合で帯広に行くことになり、数年間空き家のままにしていた住宅は、雨漏りがするなど、とても住めない状況になっていました。これがリフォームの始まり。リフォームにも色々ありますが、柱や梁も取り替える大規模なリフォームとなりました。
施主は帯広で木材産業に関連する仕事をされていました。帯広はカラマツの産地。リフォームには何とか十勝のカラマツを使いたいと、考えていたようです。設計も十勝の業者にこだわりました。
カラマツは「割れる」「曲がる」「ねじれる」と悪いところばかり噂される木材ですが、奥様はそんな不安よりもだんな様の仕事を生かした家を建てられるのが楽しみだったといいます。
カラマツは「木」の感じがする
また、「地産地消(ちさんちしょう)」「産消協働(さんしょうきょうどう)」「地材地消(ちざいちしょう)」という言葉があります。どれも地域の産物を地域で利用するということをいい、木材に限っていえば、地域で育った木材を使うことが、気候条件などの条件にぴったりと合った住宅造りにつながるといいます。
また、木の家はすぐに直せるのも魅力。確かに工業製品と比較すれば曲がったり割れたりねじれたりしますが、取り替えたり、並べなおしたり、埋めたりと、いざとなれば施主が自ら修理できるのも魅力です。
さらに、「シックハウス」という言葉がありますが、無垢の木で作られた住宅はシックハウスの原因となる化学物質をほとんど出しません。
細部までカラマツにこだわり
S邸が他のカラマツの住宅と異なるところは、造作の一部にも徹底してカラマツが使われている点。既製品ではないので、大工さんが一つ一つ現場で作り上げていったそうです。しかも、木は細く・薄くすると割れやすくなるため、割れの少なくなる、木目のそろった木材を選んでの作業。多くの労力がかかったといいますが、統一感のある内装となりました。また、床板の一部にもカラマツを使用。カラマツの木目を浮き上がらせる“エンボス加工”により、足の裏で木目を感じられる、優しい床になりました。
階段の手すりもカラマツで造作 | エンボス加工のカラマツ床板 |
「パキッ」と音がする
竣工してから4ヶ月。最近はしなくなったものの、これまで、「パキッ」という音が何度か聞こえたそうです。これは、木材が割れ、曲がり、ねじれるときに出す音で、家具などでも音がすることも。秋に建てられた住宅は、冬になって急激な乾燥期を向かえ、環境に急激に対応するためにこれらの音を出します。最初のころは不安を感じたといいますが、最近はほとんどしなくなったといいますし、きっと今後はまったく音はしなくなるでしょう。当然、強度にもまったく問題ありません。地元の木材を使った住宅はすぐに環境に対応し、より「快適」な住環境を提供してくれるでしょう。参考資料
使用した木材
[瀬上製材所の住宅用材]
[サトウの羽目板]
設計・施工監理
(有)設計工房アーバンハウス
カラマツはどんな木?
[カラマツ]
「産消協働」とは?
[北海道知事政策部のホームページ]