
道南の「郷の宝」を醸す酒蔵は、外壁の道南スギと共に歴史を刻む。
山海の美味が豊富な道南地域には、長らく日本酒の蔵がありませんでした。
道南の風土に寄り添った地酒を造ろうという志から、七飯町に2020年12月に設立された「箱館醸蔵」は、道南では35年ぶりとなる酒蔵です。
かつて箱館奉行が統治していた道南地域全体を「郷」と捉え、町内で生産された酒米や、仕込み水となる横津岳の伏流水、そしてお酒を造る人々、その全てが郷のだという思いをこめて名付けられたのが、箱館醸蔵の銘柄「郷宝(ごっほう)」です。
コンパクトながら機能性の高い2階建ての建物に使われているスギ材も道南の森町産で、もちろんこれも郷の宝の一つです。
内装のみならず外壁材にもスギを採用した建物の外観は、自然豊かな周囲の風景にも馴染んでいます。
海に近い地域のため塩害が厳しいことや、JR大中山駅前に建っているために線路からの呼びサビにも配慮しなければならないことから、塩害やサビに強い道南スギが選ばれました。
外壁はあえて無塗装にして、歳月を経て風化する姿を大事にしています。

1階の直売コーナーや2階の見学スペースの内装は、スギと土壁の色や質感が調和したデザイン。
靴を脱いで2階に上がって無垢材の床を歩くと、スギの柔らかさを実感できます。
これも、道産木材の魅力を伝えるための工夫なのです。


Data
施設名/箱館醸設有限会社
所在地/亀田郡七飯町大中山1丁目2-3
構造及び階数/鉄骨造 地上2階建て
建築面積/496.13㎡
延床面積/720.61㎡
竣工年月日/2021年8月30日
建設主/箱館醸蔵有限会社
設計者/有限会社伊達計画所
施工者/森川・カワマタ特定建設工事 共同企業体
[道産木材の使用量と施工状況]
構造材/使用なし
内装材/1.39㎥うち道産材1.39㎥(道南スギ)
外装材/14㎥うち道産材12㎥(道南スギ)
[資材の調達方法]
森町産の道南スギを調達。二次加工品も森町の木材を使用。
[施設概要]
道南エリアで35年ぶりとなる酒蔵で、地元の伏流水や町内産の米を使った本物の地酒造りにこだわっている。道南スギが使われた建物には、酒造りの一部が見学できるスペースや直売コーナーも設けられている。
Builder’s Voice
道南に久しぶりに誕生する酒蔵ということで、建築にあたってこの地域の木材を使うことは当然の選択でした。道南スギには抗菌効果があり、また冬の厳しい風から建物を守る保温性にも優れています。
外壁が長持ちするとともに、無塗装にしたことで表皮の風化が良い味となり、酒蔵とともに歴史を刻んでいきます。道南の「郷の宝」として、地元に長く愛される酒蔵になることを願っています。
[伊達計画所]
写真撮影:並木博夫
(※HOKKAIDOWOODBUILDING2022掲載)