ブログBLOG

建築物

美深町立仁字布小中学校

森林と共に栄えた町にふさわしい、地元の木材の温もりに満ちた校舎。

北海道の北に位置する美深町は、面積の約85%を林が占める、林業・林産業が基幹産業のまちです。老化した美深町立仁宇布小中学校の建て替えにあたり、林業・林産業の振興に寄与するとともに、仁字布(にうぷ)が「森林と共に栄えた地」であることを示すため、町産材を多く使用した木造建築物となっています。

林業で栄えた地域の恩恵を表現することが新校舎のコンセプトであり、永続的な森林資源の活用を可能とする「豊かな森を守り・育みあうこと」を根幹に、地域振興や木育につながる建物を目指しています。施工にあたっては、「SGECプロジェクトCoC全体認証」も目指し、森林認証材を72%以上使用。どこの材が施設内のどこに使われているかを追跡するなど木材の工程や現場内管理を徹底することで、国内大型木造建築物では初となる「SGECプロジェクトCoC全体認証」の取得に至りました。

全体設計にあたっては多様な観点から議論を重ね、ホールを挟んだ両側居室としています。活動を支える「共用ホール」は、仁字布地区山間を象徴する入布山の尾根を抽としたライン上に配置。四季を通して居心地のよい空間を目指して、さまざまな技術を組み込みました。建物端部にある職員室についても、年代に関係なく同じものを共有しながら、それぞれの居場所を作れるよう計画を進めました。

寒冷地で木造在来工法を採用する際には、断熱欠損や内部隠ぺいされた金物の結露が課題となります。厳冬期にはマイナス30°Cともなる厳しい環境での木造化・木質化には特に配慮が必要です。この温度差による結露や湿度変動による木材へのダメージを鑑み、一般的な小屋裏断熱ではなく、連続する断熱・通気ライン(壁・屋根)を採用。また、吹抜け共用ホール上のハイサイド窓の下から木造小屋裏チャンバー方式によって空気を循環させ、小屋裏内部で空気を滞らせないことで結露による木質材の腐食を防止する工法を採用しています。材の切出しから現場までの工程に町内の手が関わる「地域で作る学校」を目標に、材加工を含めて近隣地で完結できる技術のみを採用しています。

仁字布はアイヌ語で「ニウプ(森林)」の意味に由来します。「森林と共に栄えた地」にふさわしく、全体の7割以上に美深町の道有林・町有林の木材が使われた、温もりに満ちた明るい木造の学び舎が完成しました。
地域に開かれた学校として将来にわたって愛され、親しまれていくことが期待されています。

また、仁宇布小中学校には山村留学制度があり、これまでに全国各地から延べ300人を超える子どもたちを受け入れてきています。「地域から愛され親しまれる木造校舎」と同時に「全国から集まる子どもたちの思い出の学び舎」となるよう、建設中には児童生徒が木造新校舎の意義や森林認証を知る機会を設けました。新校舎の内壁に施されたトドマツの羽目板には、森林体験学習で子どもたちが木材の代り出しを見学した際の原木が使われており、愛着心や親近感が深まるような配慮がなされています。同校の教育目標「生きる喜びを見いだし、創造する子ども」にあるように、子どもたちが明るい未来に向かって大きく成長するための学び舎となることでしょう。

Data

施設名/美深町立仁宇布小中学校
所在地/中川郡美深町字仁宇布252番地
構造及び階数/木造(金物軸組工法)平屋建て
建築面積/819.81㎡
延床面積/803.25㎡
竣工年月日/2021年3月22日

建設主/美深町
設計者/株式会社柴滝建築設計事務所
施工者/橋本川島・山崎特定建設工事企業体

[道産木材の使用量と施工状況]

構造材/260.61㎥うち道産材 260.61㎥(トドマツ・カラマツ)
内装材/26.65㎥うち道産材18.99㎥(トドマツ・カラマツ)
外装材/使用なし

[資材の調達方法]

カラマツは地域材の間伐小径木を主体に調達し、「下川フォレストファミリー」で集成材製造・加工。
トドマツは美深町の「谷口木材(株)」にて製材乾燥を行い、現場へ納入。

[受賞歴]

・ウッドデザイン賞2021ソーシャルデザイン部門
・令和3年度 木材利用優良施設コンクール 優秀賞
・SGECプロジェクトCoC全体認証(森林認証)取得

[施設概要]

山村留学制度により、これまで全国各地から延べ378人の子どもたちを受け入れてきた学校。美深町の基幹産業である林業・林産業の振興に寄与するとともに、仁宇布が「森林と共に栄えた地」であることを示すため、町産材を多用した木造校舎に建て替えられた。

Builder’s Voice

「森林と共に栄えた地」にふさわしい木造の学び舎の完成と同時に、大規模木造校舎全体の森林認証の取得は全国初であり、地域の新しい自慢の施設として大いにアピールが期待できるものと喜んでいます。新木造校舎で学ぶ子どもたちが、明るい未来に向かって大きく成長し、この学校が地域の皆様方に開かれた学校として、将来にわたって愛され、親しまれていくことを願っています。
[美深町教育委員会 草野孝治教育長]

(※HOKKAIDOWOODBUILDING2022掲載)