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建築物

浦河フレンド 森のようちえん

道産材の木造立体トラスの新園舎は、子どもたちの豊かな感性を育む空間。

0歳から6歳の約100名の園児が元気いっぱいに過ごす幼保連携型認定こども園「浦河フレンド森のようちえん」。
「自然と人間を愛する共育(きょういく)」という理念を掲げ、園舎に隣接する森を日常的に活用しながら子どもたちが自然の中で遊ぶ体験を大切にしている、その名の通りの「森のようちえん」です。

隣接する森や周辺の自然環境との調和を考える園では、新園舎建設プロジェクトのスタート当初から木造建築以外は考慮せず、さらに環境への配慮という観点から地元で育った木材を利用しました。一年を通して薄着・裸足で過ごす子どもたちは、日常的に身体全体で木と触れあい、木の温もりを感じながら育ちます。また、触覚以外の感覚でも、自然の素材である木の素晴らしさを感じることができます。木造の園舎の中で、子どもたちの豊かな五感が育まれているのです。

道産木材の使用という「地産地消」にこだわった新園舎は、遊具にもなっている木造立体トラスそのものの構造自体が「木造化」、意匠全体が「木質化」されています。一辺が33mの正四角錐を1ユニットとした立体トラスを最大で3層に積んで作られた3スパンの無柱空間(遊戯ホール)がやわらかく全体を覆いつつ、立体トラスが各活動の場をゆるやかに分けています。このゆるやかな空間の区切りは、子どもたちのその日の興味に応じてグループ分けをする、たて割保育の自由度を高めることも担っています。さらに床から立ち上がる立体トラスの架構そのものが、子どもたちの豊かな発想のヒントとなるように意図されています。

室内のどこにいても屋内外の環境をシェアしている感覚が持てるように配置した 開口部からの光と風は、連続する一体空間に多様性を与え、そのときの気分や行動に合わせた居場所を子どもたちが選択できるようになっています。高断熱と地盤の大きな熱容量を利用した温冷放射によって年間を通してベース温度が保たれ、建物の消費エネルギーを抑えつつ、安定した温熱光環境の中で、自然の揺らぎが感じられる園舎となっています。

木造立体トラスの新園舎は、子どもたち自身が自由な遊び方を考え、自分の世界を広げながら感性を育んでいく場所として、「自然の中、人々の間で、共に支え、共に育て、共に育つ」という園の理念を体現する出発点となりました。「北海道赤レンガ建築賞」と「北海道建築賞」をダブル受賞した園舎には日本各地から多くの視察や見学があり、地域の活性化にも寄与する建物となっています。また、地域住民が森 を整備する様子から、子どもたちにも木や森を大切にする気持ちや、自然への敬意と親しみが生まれています。

園では、新園舎で行われる質の高い教育・保育を通して子どもたちの成長を支えることに加え、子育て世代の移住等の可能性も高まる「森の留学」をはじめとする活動にも力を注いでいく方針です。さらに、施設や森を地域のコミュニティに積極的 に活用してもらい、森づくり、畑づくり、味噌づくりなどを一緒に行うことで、子どもたちの自由な発想を育みながら、地域の方々との“共育(きょういく)”を実現すること を目指しています。

Data

施設名/ 浦河フレンド森のようちえん
所在地/ 浦河郡浦河町東町かしわ4丁目339番2
構造及び階数 / 木造 (立体トラス) 平屋建て
建築面積/ 1,331.27㎡
延床面積/998.26㎡
竣工年月日 / 2022年2月28日
建築主/ 学校法人フレンド恵学園
設計者/ 株式会社照井康穂建築設計事務所
施工者/ 岩田地崎建設株式会社

[道産木材の使用量と施工状況]

構造材/ 94.5224㎡うち道産材59.2913㎡ (カラマツ)
内装材/ 8.3097㎡うち道産材8.3097㎡ (ナラ、カバ、クルミ)
水装材/ 7.5828㎡ (欧州アカマツ [サーモウッド])

[資材の調達方法]

・構造主材(集成材)/道産のカラマツを調達し、留辺菜町 で加工。
・デスクなどの家具には「ひだか南森林組合」からタモ材 を調達し、浦河町で加工。フローリングには道産のナラ、 カバ、クリを使用。

[受賞歴]

・第47回北海道建築賞
・第35回北海道赤レンガ建築賞

[施設概要]

0歳から6歳の約100名の園児と約45名の職員が在籍する幼保連携型認定こども園。
「森のようちえん」として子どもたちが自然の中で遊ぶ体験を大切にしており、老朽化した園舎を現在の場所に移転・新築した。

Builder’s Voice

園舎完成後、日本各地から視察や見学に多くの方にお越しいただき、注目度の高さに驚いています。持続的な地域への貢献を目指す私たちにとって、大切なのはこれから。質の高い“共育”・保育を通して、子どもたちの成長 にさらなる情熱を注ぎ、同時に都市部との交流人口の創出が期待できる「森の留学」などにも尽力し、継続して地域貢献に努めていきたいと考えています。
[学校法人フレンド恵学園]