「木」と「家」と「健康」のはなし

天然のエアコン効果
★カビや結露を抑えてさわやか空間 〜木の調湿作用★

 木は切られて木材となった後も生きて呼吸をしているため、木でできた家は、調湿能力が非常に優れています。湿度が高いときには適度に水分を吸収し、反対に乾燥しているときは水分を放出しながら、常に室内を一定かつ快適な状態に保ち、住まいの敵といわれるカビや結露の発生も抑制します。
 右のグラフでもわかるように、室内に木材の内装を施工している場合、施工していない場合より明らかに室内湿度の変動が押さえられています。
 また、外気湿度が高くなっても、室内の湿度は低く押さえられています。
 つまり、家に木材が使われているだけで、「エアコン」があるのと同様の効果があり、しかも、電気などのエネルギーを必要とせず、エアコン特有の排気臭や、機械自体に発生する雑菌などに悩まされることもなく、いつもさわやかな環境で暮らすことができるのです。



★夏涼しくて、冬暖かい 〜木の断熱・保温性★
 木材は、熱を伝えにくく、適度に熱をたくわえやすい、断熱性と保温性に優れた材料です。そのため、木の家は外気温の影響をあまり受けません。ですから、木でできた家の中は、真夏でも涼しく、冬は暖かいという特徴があります。
 また、木材は触っても冷たい感じがしません。次の図は、木・コンクリート・金属、それぞれの飼育箱でマウスの子供を飼育した実験結果をグラフにしたものです。生後10日目の数値で比較してみると、木製箱は約90%と大半が生存しているにもかかわらず、金属箱は約50%、コンクリート箱にいたっては約10%の生存率しか見られないという結果になっています。体重も、木製箱の方は順調に増加しています。
 この実験結果は、人に置き換えて見ることもできるかもしれません。特に、何に対しても敏感に反応する赤ちゃんも、木の家なら、スクスクと元気に育ってくれることでしょう。




■雑菌を寄せつけない清潔空間

 ぜん息やアレルギー性皮膚炎などの原因といわれるダニも、木の匂いには非常に弱いということが確認されています。木材チップの中に、アレルギーを引き起こす代表的なダニである「ヤケヒョウヒダニ」を混ぜて放置すると、24時間後にはほとんどが死滅することが報告されています。
 その結果は、右図に示すように、クスノキ、ヒノキ、ヒバ材の上に置いた場合、24時間後にはほとんどのダニの行動が抑制されています。
 また、抗生物質が効かず院内感染の原因といわれるMRSAや、O−157などの細菌に対しても、ヒバなどの木の精油に強い殺菌作用があることが確認されています。
 木から発散される匂いや成分には、雑菌や害虫を寄せつけず、環境を清潔に保つ作用があるのです。





■快適フローリング

★木の床にダニの住みかナシ★
ダニはほこりや湿ったところが大好きです。そんなダニにとって、毛足の長いカーペットはまさに格好の住みかといえます。一方、木の床は、ほこりを掃除しやすく湿度を適度に調節するため、しつこいダニも、相当な根性がなければ、住みつづけることは困難です。
 集合住宅の床を、カーペットから木の床に改装し、改装前後のそれぞれの床のダニ数を調べたところ、1m2あたりのダニの数が、木の床ではカーペットの時の約5分の1に激減し、ダニの害も改善されたという報告があります。
 また、先にも述べましたが、木の香りの成分にもダニを寄せつけない作用もあるので、とにかく木の床はダニにとって最悪な環境でも、私たちにとっては最適な環境ということがわかります。


★転んでも痛くない!? 〜木の衝撃吸収力★
転んだときに、頭が床や地面に叩きつけられるスピードは秒速4〜6m。しかも、最大衝撃力は200kg以上と、大きな相撲取りの体重と同じくらいにもなります。
 右のグラフは、床の上に色々な高さからガラス玉を落とし、ガラス玉が割れた高さを調べた結果を表しています。さすがにタタミにはかなわないものの、木の床は他の床に比べて衝撃吸収率が高いことがわかります。 
 木材は、細かいパイプ状の細胞が集まってできているため、物体が衝突すると、まず表面層の細胞がつぶれ、さらに次の層の細胞がつぶれるというように、順次細胞がつぶれていくので、衝突した物体が跳ね返るまでには相当時間がかかります。衝撃力の大きさは、この時間に反比例するので、木材は衝撃吸収力に優れているということになり、転んだときのショックも少ないのです。
 また、木の床には適度な弾力性があり、足腰への負担が軽減されることからも、お年寄りや子供も安心して過ごすことができます。


■ホルムアルデヒド
 「化学物質過敏症」「シックハウス症候群」という言葉を最近よく耳にします。これらは、ビニールクロスやフローリング合板、家具の接着剤、塗料などに使われているホルムアルデヒドをはじめとする多くの化学物質が原因といわれています。
 頭痛やめまい、アレルギー症状、疲れやすくなるなど、人によって症状はさまざまですが、症状が重くなるにつれ普段の生活もままならなくなるほどで、かかってしまった人たちにとっては、とても深刻な問題です。
 右の表は、ホルムアルデヒドの人体への影響を示したものです。


 さらに、左の図では、室内内装下地材別の室内ホルムアルデヒド(HCHO)の気中濃度を測定した結果です。
 無垢のスギの板を内装下地材に使用した場合が最も室内濃度が低く、無垢の木材からのホルムアルデヒド放散が低いことを示しています。
 木材は天然の素材ですが、その中には本来、樹木として生育する上で必要となる、多様な揮発性物質が含まれています。
 こうした揮発性物質には、フィトンチッドなどのリラックス効果を持つものも含まれ、自然の素材である木材の持つ特徴の一つとなっています。
 木材特有の揮発性物質は特異な例を除き、人間の生理に悪影響を与えるような量を発散することはなく、むしろ、様々なリラクゼーション効果が確認されています。
 しかし、木材を建築等に使用する場合、製材、乾燥、接着、塗装等の加工が行われ、こうした加工の過程で使用される接着剤、塗料、充填材などには、ホルムアルデヒドをはじめとする有害な揮発性物質が含まれる場合があります。
 現在は、家庭や学校、職場などで、建築材や家具等の木材・木製品を使用する際に、このような揮発性物質の発散がゼロもしくは健康に無害なレベルになるよう、様々な対策が講じられています。
 また、すでに住んでいる住宅の場合も、適切な換気を行うことで、室内のホルムアルデヒド濃度の上昇を防ぐことができるといわれています。


木の家で安心長生き
 特別養護老人ホーム入居者を対象に、ケガや心身の不調について調査したところ、木材が多く使われている施設では、インフルエンザや骨折、不眠などの発生率が低いという結果も出ています。
 些細なことが大事となってしまうお年寄りや子供にとってはもちろんのこと、誰もが安心して快適な空間の中で健康的に暮らしていくために、木材を多く取り入れた環境が、今後ますます必要となるでしょう。



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