ログハウスの保守・点検の基本は通常の木造住宅とほとんど変わりませんが、決定的に違う点は壁が時間の経過によって縮むこと、すなわちセトリングに対処しなくてはならないことです。
壁体の収縮
ログハウスの基本材料として使われる丸太や角材は、表面が乾燥しているように見えても内部はほとんど生材に近いか、または乾燥途上にあるのが普通です。従って、竣工後においても乾燥は進行し、空気中の湿度と釣り合う状態(木材の平衡含水率、一般には15%前後)まで継続します。それに従って木材は収縮していきます。
例えば、直径30cm長さ3.65mの丸太の平均含水率が30%から15%まで低下したとします。木材の含水率1%あたりの平均収縮率は接線(板目)方向で0.3% 、半径(柾目)方向0.15%、長さ(繊維)方向0.01%ですのでその時の丸太の直径の収縮は、
30cm×(30%−15%)×0.15%=0.675cm
になります.すなわち直径が約7mm収縮することになります。これが10段重ねの壁であれば約7cmも縮むことになるわけです。
また、長さの方向の収縮は、
360cm×(30%−15%)×0.01%=0.54cm
です。丸太の直径よりは少ないですが、丸太の縦継ぎの部分でこのことに対応しておかないと思わぬ隙間が開いてしまいます。
軸ボルトの締め付け
ログハウスの壁体は軸ボルトで締め付けられています。しかし、前途のように壁体は徐々に収縮するので、緩んだ分だけボルトの増し締めをしなくてはなりません。締め直しは次の時期を基準に行います。
第1回目 竣工後1ヵ月
第2回目 同 3ヵ月
第3回目 同 6ヵ月
第4回目 同 1年
第5回目 同 2年
それ以降は年1回行うようにします。ボルトを締める場合は、締め過ぎないようにします。締め過ぎると座金が曲がったり、ボルトが切れたりしてトラブルを招きます。
建具調整
開口部への建具の取り付けは、竣工の段階でセトリングを考慮して収縮スペースが設けられています。これも定期的に点検し、十分な余裕があるように調整します。このとき、収縮スペースに充填されている断熱材が湿っている場合には取り替えておきます。点検の時期としてはボルトの点検時期と合わせて行います。
防腐・防蟻処理
竣工時に防腐・防蟻効果のある木材保護着色剤を塗装した場合でも、雨掛かりとなる部分は数年でその効果がなくなります。通常は3年を目安に再塗装をします。
また、丸太材等は乾燥収縮に伴い、表面に干割れが生じます、建築用コーキング剤で割れ部分を充填しておきます。