- 実績と先進的な提案で「環境モデル都市」に選定
- 政府は2008年7月に、地球温暖化対策の地域での提案を全国の自治体から集め、中でも先進的と評価した6つの自治体を「環境モデル都市」として選定しました。下川町もこのモデル都市の一つとして、帯広市や横浜市と並んで選ばれました。
従来から循環型林業経営や公共施設への森林バイオマスボイラー導入、森林教育の実践など、先駆的納取組を行ってきた下川町は、これからさらに総合的な施策によって、「北の森林共生低炭素もモデル社会プロジェクト」をスタート。同じく林業を生業とする小規模自治体を中心に注目を集めています。
- それまでなかった地元木材流通ルートを確立
- そんな下川町で、環境保護や産業振興の一環として行われてきたのが、FSC住宅の普及促進です。「環境に配慮して、持続的に適切に管理されている地元の木材は、どんどん流通ルートに流れてしまい、意外なことに地元ではほとんど使われていませんでした。それではいけないということで…」。森林組合が中心となってFSCを取得、さらにクラスター推進部が製材工場、工務店などの理解を求めて奔走、従来の流通ルートとは別に、地元材を使って家を建てることのできる流れを確立することで、下川町を中心に十数戸の家が建てられてきました。
- 地元材の家の意義を1人でも多くに伝えたい
- 次のステップは、消費者へのFSC材住宅のさらなるピーアールです。「道産木材や地元のFSC材を使って家を建てることができる。そのことを1人でも多くの方に伝えたいのです」。
“安さ優先”の考えから離れ、道産木材で家を建てることによって、地域の産業振興と森林保全の二つに同時に貢献することができます。
「見学会やセミナーなどをできるだけ実施。地元の方々の環境に対する意識も、しだいに向上してきました。同じような試みがもっと多くの地域で行われ、もっと多くの地域木材住宅が建つようになるとうれしいですね」。
- ※森林認証とは
-
環境や地域にきちんと配慮した管理や伐採が行われている森林を、信頼性の高いシステムに従って評価し、基準以上の森林を認証するという制度です。
制度を担う機関として、FSC(Forest Stewadship Council 森林管理協議会)や、SGEC(Sustanable Green Ecosystem Council 『緑の循環』認証会議)などがあります。
認証制度の背景にあるのは、「持続可能な森林経営」という考え方です。環境保護や災害予防の観点からも森林の適切な管理が重要です。そんな森林から伐採された木材の販売によって資金が生まれ、それによってまた管理を行うといった循環が形成されることによって健全な森林をいつまでも保つことができます。
森林認証はこの循環をサポートするもの。認証された森林から生み出された木材製品は、ロゴマークなどで森林認証をアピールすることができ、消費者はそれを選択・購入することで地域の森林管理や環境保全に貢献することができます。
- 大工の祖父の思い出から家具職人の道へ
- 「いつも僕が頭に描く“木味(きあじ)”は、この仕事を始めた頃に出会った道産ナラ材のもの。今でも旭川の製材所に材料を探しに行って『これだ!』と思うと必ず道産木材なんです」。
名古屋市出身の高橋三太郎さんは、地元の離れ北海道大学に入学、大工だった祖父の影響もあって、建築家を目指します。「でも、もっと遠くへという思いが強くなって…」。高橋さんはヨーロッパに渡り、それから三年間、世界各国を旅してまわります。旅の途中、木材を巧みに扱っていた祖父の思い出から、「木に関した仕事で生きていこう」と決めた高橋さんは、帰国後、札幌を再出発の拠点に選び、家具職人を目指します。
- 椅子づくりは建築とよく似ている
- 一年学校で学んだ後、独学で木の家具づくりの技に磨きをかけていきました。「木の仕事を始めて、まず魅せられたのが、道産ナラ材の木目の美しさでした」。
コンペティションで受賞するなど、多方面で高い評価を受ける高橋さんの作品の多くは、今でも道産木材で作られています。「椅子づくりは建築の仕事とよく似ているんですよ」。それは機能やデザインだけではなく、ライフスタイルの提案が作ったものに込められているから。「結局、本来やりたかった建築に近い仕事ができていて、幸せですね(笑)。まだまだ道産木材にはいろんな可能性があると思っています」。
- 道産木材の良さを同業者に、地域の人たちに。
- 「同じ地域で育った木はいいよ。風土や相性が良いから家具や施設になっても心地よくなじんで、良い風合いが出るからね」。そう語るのは東北海道木材協会の鈴木理事。鈴木さんが社長を務める企業では、製材・加工までをトータルに行っています。明るく節目の表情が豊かなカラマツ材や、美しい白さのトドマツ材などを、道東を中心に道内各地の住宅や公共施設、環境施設などに使用しています。
鈴木さんは自社で極めてきた道産木材の乾燥や表面削り技術などを、同じ道東の製材関連会社に積極的に指導しています。
「競合するのではなく、同業者同士が支え合って、さらに道産木材の品質を向上させることが大切なのです」。それが「地材地消」の要だと鈴木さんは考えています。地材地消の促進と森林育成は併せて重要な課題。だからこそ、今後、人工林が成熟した時に備え、各事業所は確かな製造技術と稼動力を持っていなければなりません。
- 子どもたちにふるさとの木を使ってもらう活動を展開中。
- 幅広い施工を行っている鈴木さんが最も胸を躍らせるのが、学校施設や公園遊具など、子どもたちを育む知育・教育関連の仕事。
「道産木材に触れて子どもたちが元気に育ってくれることが、うれしくてたまらない」。
釧路地区の地材地消普及促進グループの一員として、近年、釧路管内の小・中学校の子どもたちに、道産カラマツ材などの机天板を無償で贈る事業も行ってきました。社員とともに自ら学校へ赴き、自社製作の天板を机に取り付けています。子どもたちの喜ぶ顔を見ると、うれしさが込み上げるそう。
「大変だけれど楽しくてやめられない。地元の木の温もりや素晴らしさを1人でも多くの子どもたちに教えてあげたい」。
鈴木さんの顔がほころびます。