住宅(美瑛町・音更町) / 森林とふるさとを元気にする「地材地消」

「木造の家は、生き物。呼吸もすれば、変化もする。それを楽しんでいきたいと思ってます。」総カラマツの家に暮らす堀口訓諭・千沙代さんご夫婦(美瑛町)

工務店探しから始まった「カラマツの家」

 「北海道に家を建てるんだから、北海道の木を使おうと決めていました。だから北海道に多いカラマツを使った家を造ろうと、思い立ったんです」。しかし、北海道ではカラマツ材を建築に使うという実績が少なく、施工業者探しにひと苦労。インターネットの検索で、ようやくカラマツ材で家を建ててくれる工務店を見つけ、約半年の時間をかけて広々とした4LDKの家が完成しました。
 梁や柱、天井など、主要部分で使われている木材は、全てムクのカラマツ材です。「ドアなど一部建具には、カラマツの集成材を使用しました。とにかく全てカラマツです(笑)」。壁には珪藻土壁材を使用。「木と土が湿度を自動的に調整してくれますから、室内は常に快適です。まさに呼吸する家ですね」。
 また、住み始めて驚いたこともあったそう。「構造上は全く問題ないのですが、最初の頃は馴染むまで、木材が割れるピシッという音がしていました。今はもう一切ないですが。また最初は真っ白だった木の色が、だんだん赤みを帯びて、部屋の雰囲気にも温かみが出てきました。そんな変化を楽しみながら付き合っていけるのも、木の家ならではですね」。

工務店探しから始まった「カラマツの家」

ドイツ人の人生観や、環境意識の高さに
感化を受けて

 堀口さんご夫婦は本州からの移住者。サラリーマン時代は転勤族で、本州を中心に16回の転居を経験、訓論さんのリタイア後に人生を過ごす場所を美瑛町と決めました。
 この決断には、堀口さんがドイツに7年間駐在した経験の影響が大きかったようです。「日本人には仕事が全て。でもドイツ人は仕事も大事だけど、自分の人生がもっと大事という生き方です。私も退職後は、会社や仕事から離れ、自然の中で自分の人生をエンジョイしたいと思うようになりました」。
 さらに印象に残っているのがドイツ人の環境に対する意識の高さです。「例えば私有地でも、直径17cm以上の木は、伐採や枝払いに許可が必要。木を守るという社会的なコンセンサスが、しっかり形成されているのです」。
 堀口さんは、北海道で家を建てるなら、絶対にカラマツの家、会う人ごとに勧めています。「住む人が快適なのはもちろんですが、地材地消の好循環が生まれれば、地域の森林の保護にもつながる。そうなれば、地域経済も活性化しますよ。日本もそろそろ、そういった環境意識を持った消費活動を行うタイミングだと思います」。

ドイツ人の人生観や、環境意識の高さに感化を受けて

「家を建てることで、地元になにかができるのが、いいなと思いました。」地元・十勝の木で建てたFさんのお宅(音更町)

きっかけは設計士からの提案

 最初は、雑誌で見つけた家のデザインが気に入って、設計士の小野寺一彦さんに連絡したFさん。「とかちの木で家をつくる会」に所属する小野寺さんは、以前から地域材を使った家づくりを提案していました。「十勝の木を使ったら、と勧められて、地元の木を使うことで山や環境のために自分にもなにかができるのはいいなと思いました」とFさん。
 明るい玄関からFさんのお宅に入ると、室内のあちこちにある道産のタモやナラ、カラマツなどの木肌が、大きな窓から射す光と調和して柔らかい温かみを感じさせます。「2階の子ども部屋は、遊び盛りの子どもたちがたぶん傷つけるのだろうと思い、比較的価格の安いカラマツを選びました」。
 カラマツは従来“ねじれる、曲がる、そる”と言われてきました。けれど小野寺さんから使う場所を選んだり、樹齢によっては安定しているなどの説明を受けていたので不安はなかったそう。外から眺めたF邸は、外壁にもカラマツの間伐材が使われ、素朴な風合いが十勝の風景に溶け込んでいます。
 “十勝で生まれた木が活かされている”。F邸には、そんな空気が漂っています。

きっかけは設計士からの提案

●地材地消メッセージ~建設業
とかちの木で家をつくる会 小野寺一彦さん十勝の活性化のために
とかちの木で家をつくる会 小野寺一彦さん
 私たちの会には、林業、製材業、建設業などの会員がいます。地域の木を使えば山もよくなるし、経済も豊かになる。そのために木の知識を広めたり、質の高い材にするための連携やシステムづくりに取り組んでいます。現状ではまだ木についての認識や材づくりの技術に向上の余地がありますが、地元の人間だからこそ、十勝の活性化のために、地域の木の魅力を引き出して、伝えていきたいと考えています。