実践!地材地消 - 企業の取組 / 森林とふるさとを元気にする「地材地消」

<企業の取組 1> 木質バイオマス - 苫小牧市

「地材地消」の今後を占う道産針葉樹使用の木質繊維断熱材工場。

 次世代の地場産業を育てようと、複数の道内企業の出資により設立された(株)木の繊維苫小牧工場が生産しているのは、カラマツ・トドマなどの道産針葉樹を原料にした木質繊維断熱材「ウッドファイバー」。ドイツのホーマテルム社と製造・販売のライセンス契約を結び、2009年春から稼動しています。
 「ウッドファイバー」の大きな特徴はその多機能性。熱容量はグラスウール(16K)の5倍以上。外気温の影響が少ないので室温が安定し、冷暖房費の節約にもつながります、また、密度が高いため、防音・遮音性能が高いのも特徴。さらに木質ならではの調湿機能(湿気がでてきたら水蒸気を取り込み、乾燥してきたら放出する機能)が働き、常に室内の潤いが保たれるとともに、結露も解消できるそう。
 優れた環境性能も見逃せません。原料はこれまで使われていなかったトドマツ・カラマツの林地残材や、細い間伐材、曲がり材など。これらから木質繊維を取り出して断熱材を製造し、残った材料は工場の熱源に使われるので、製造過程での廃棄物はゼロ。また、グラスウールなどの鉱物断熱材に比べて、製造から廃棄までに発生するCO2は半分以下。廃棄後は土に還すほか、育苗床等に再利用することもできるそうです。
 ビジネスとしての高付加価値性も重要なポイントです。1tあたりの製品価格で比べるとペレット燃料の3倍以上、木質チップの10倍もあるとか。著名なシンクタンクもその事業性を推奨する木質断熱材事業。次世代地場産業のエースとしてその成長に大きな期待がかかっています。

2009年7月から稼動している苫小牧工場
▲2009年7月から稼動している苫小牧工場

スタッフが持っているのが「ウッドファイバー」
▲スタッフが持っているのが「ウッドファイバー」

<企業の取組 2> 道産木材の活用 - 札幌市

飼い主もペットも安心。間伐材活用のリードキーパー。

 その堅牢な特性を生かして建設現場では杭などに利用されている道産カラマツの間伐材。建設業を本業とする大欧岩本ビルテック(株)では、以前から木目がとてもきれいな道産間伐材を製品化できないだろうかという思いがありました。
 リードキーパー(ペットをつないでおく台)を発案したのは愛犬家の社長。最近はペットを同伴できる施設が増えてきたとはいえ、一般のお店や、病院、公共施設なでではまだまだ制約がありますし、車の中もペットにとって快適とはいえない環境です。なんとか施設の前で待たせておける器具ができないだろうかと、発想が広がりました。
その後社員がアイデアを出し合い、試行錯誤を重ねた結果、ワンちゃんを模したリードキーパーが誕生しました。
 道産間伐材が使われているのは脚の部分ですが、他の部分にも道産木材を使用し、ワンちゃんがかじっても安心なよう表面に塗るニスも水性のものを使うなど、至れり尽くせり。
 背中にプランターが入れられるようになっていて、店の外だけでなく店内やショールームのインテリアとしても利用できるにしたこともポイント。現在では花屋、病院、カーディーラー、公共施設まで、幅広く置かれています。
 大工さんの手作りで一台一台生み出される温もりあふれるリードキーパーが、道産木材とのふれあいの機会を広げてくれるようです。

ペットとともに店頭を飾るリードキーパー
▲ペットとともに店頭を飾るリードキーパー

店内やショウルームの装飾・サインに
▲店内やショウルームの装飾・サインに

<企業の取組 3> 地場産木材の活用 - 函館市

狙いは地場木材の普及。道南スギを使ったモデルハウス。

 名前を聞くと本州の木、というイメージがありますが、道南ではふるさとの木としておなじみの「スギ」。本州では住宅用の建材としてポピュラーで、そちらからの引き合いは多いのですが、道内ではこれまであまり需要がありませんでした。
 赤味を帯びた木目も美しいスギ材を住宅用の材として地元で普及させたいと考えたのが、函館市を中心に事業を展開する住宅建設会社、北海道ハウス(株)。
 2009年10月、市内に、土台に道産カラマツを使用した以外は、構造材・小割材・仕上材など、使用木材の90%以上に道南スギを使ったモデルハウスが完成しました。特に1階の床・壁・枠材にもスギを使用し、その美しい木目が目にふれるように工夫しました。
 「地元では節が多いことなどから、以前はスギは建材として使いずらいのではないかという先入観があり、あまり利用されていませんでしたが、現在では乾燥技術も進み、外材の松材と比べてもなんら問題ありません」と太鼓判を押すのは設計を担当した三箇さん。今回使用しているのは薄く切った材を貼り合わせた集成材。問題がないどころか、むしろ扱いやすいとのこと。
 いかに普及・広報活動を行うかが今後の課題という同社。モデルハウスをきっかけに道南の風土に育まれた北海道の木の家が増えることで、さまざまな地材地消効果が生まれることでしょう。

使用木材の90%以上にドウナンスギが使われている
▲使用木材の90%以上にドウナンスギが使われている

木目が美しい内部。年を経るほどに赤味が増すという
▲木目が美しい内部。年を経るほどに赤味が増すという